こんにちは、仏像大好き芸人のみほとけです。
全国津々浦々、年間500ほどのお寺を訪れて、これまでに拝観した仏像の数は1万を超えます。本名の「みほ」と大好きな「ほとけ」をくっつけて、みほとけという芸名で、仏像をより広めるためなお笑い芸人になった人間です!浅井企画所属です。

2025年11月1日〜3日に開催された対馬グリーンブルーツーリズム協会主催の【対馬六観音まいりツアー】の体験レポートをお届けします。
6ヶ所の観音様を拝観し、霊峰”白嶽”の登山を体験、最終日は対馬六観音まつりにも参加。仏像・歴史・風土・食・人・文化・信仰、全てを学べる超ディープ対馬の旅だったんです。大感動。
仏像といえば、奈良の大仏とか、鎌倉や京都のイメージが強いですよね。正直、韓国と九州の間に浮かぶ「対馬」にあまり仏像のイメージはないでしょう。
しかし、対馬には、素晴らしい仏像がたくさんいらっしゃいました。
特に「観音さま」という優しくて力強い、慈悲に満ちた仏さまがたくさんいらっしゃったのです。(実は日本中どこにでも必ず、古くから里を見守ってくれる仏像はいらっしゃるのですけどね)
【対馬六観音まいりとは?】
対馬全土に点在する、6つの観音堂を巡礼するもの。自然環境の厳しい対馬では、限られた稲作地帯や産業が栄えた集落に、農家さんや田園を見守るように観音様が祀られていると言います。佐護、瀬田、三根、曽、佐須、豆酘(つつ)という地域に点在します。正式にいつから祀られているかはわかりませんが、平安時代に造られた仏像がいらっしゃる古〜いものです。1200年前くらいでしょうか。
江戸時代には、島で新成人の男女が連れ立って六観音まいりをするのが通過儀礼になりました。若い男女が島の中を駆け抜ける姿は春の風物詩ともいえるし、本人たちにとっては生涯の伴侶を見つける婚活のような一面もあったそうです。
ここで仏像豆知識。観音様は正式名称「観世音菩薩」「音を観る」と書くように、どんな苦しみにも気がついて寄り添ってくれる、というご利益があります。優しさと温もりに慈悲に満ちた仏さまです。冠を被ってアクセサリーをつけた可憐な姿で、さまざまな姿に変化します。例えば、千手観音とか、十一面観音とか、、、色々です。
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さて、このツアーの体験談に参りましょう。お待たせしました。導入が長かったですね、すみません。
福岡空港からANAのプロペラ機にのって40分ほどのフライトで対馬に到着。空港では対馬グリーンブルーツーリズム協会の代表で、ガイドの川口幹子(かわぐちもとこ)さんをはじめ、主催の皆様が待ち受けてくれていいました。
ツアー参加者は私の他4人。みんなでミニバンに乗っていよいよスタートです!まず辿り着いたのは、島のど真ん中、万関橋にある休憩所と烏帽子岳展望台。 ハゲハゲの地図を前に、島の地形の案内がスタート。

川口さん「こんなボロい地図で恐縮ですが〜」
一同「笑」
参加者の距離が縮まりました。対馬は縦に長くて、東京23区よりも広くて、上下に分かれるような地形です。中央を東西に分断するように通るのが江戸時代にできた「大船越」という運河。物・人・学問の交流のために、日朝貿易のための運河が掘られ、明治時代になると日本海軍によって国防を閉ざすために運河も掘られて。
川口さん「交流の拠点であり、国防の最前線であったんです」

烏帽子岳展望台では超絶お天気に恵まれたことで北に釜山が見えて、南に壱岐島が見えました。ああ交流と国防の島だ・・・としみじみ実感しながら。浅茅湾が穏やかで。昔からこの浅茅湾に入ると、漁師さんも貿易船も「これで一安心」となったそう。
実はこの前にランチをいただいていました。

名産品のアナゴの天ぷらなど、地ものをたっぷりいただきます。漁師さんがやっている海小屋で、海の生活を学びながらいただいて、とっても美味しい。
続いて和多都美神社へ。
海との生活をする人々の信仰の地。環境と古事記の事象がバッチリと合う、神聖な場所です。山幸彦と豊玉姫の神話が起こった場所らしい。この海の底には竜宮城があるんだとか。
海という自然の脅威&恵で生きている人間の信仰の最深部で、海によって生かされているなぁと感じられる場所でした。船で参拝に来る人のために海側に鳥居が立っています。

令和2年。大きな大きな台風十号が襲来。街の中に被害はほとんど無いけど、和多都美神社の海の鳥居がポッキリと折れた時、島民は「身代わりになってくれたんだ」と口々に言ったそう。島の人は神仏と一緒に生活してるじゃん!と感動しました。
ちなみに、ツアーはベテランのガイド川口さんが要所で立ち止まってはそのスポットにまつわる「対馬クイズ」を出してくださるのですが、これが楽しいのです。早押しボタンを持参したかったくらいです。対馬クイズツーリズムをやってほしいくらいです。

さあ、観音様に会いにゆきます。これまでの話と打って変わって、観音様はちょ〜〜〜素朴。だからいいんです。まずは佐護の観音様。

観音様のお顔も素朴ですね〜。右の立っている観音様は、どことなく法隆寺に伝わる国宝の「百済観音」に似ていると思いました。四角くて、お衣も独特の形。朝鮮半島って特に観音信仰が盛んなんです。だから対馬には早い段階で民間を通じて観音様の信仰が入ってきていたんですね。
左の観音様は丸みがあります。組んで座る足もとにまとわりつくお衣が一定のリズムで深く刻まれていて、美しいですね。地元の人が彫ったのでしょうか、朝鮮半島から来た人が彫ったのでしょうか。うまさと下手さの間にある、素朴な姿にホッと心温まりました。
また、ツアーでは同行してくれる強い味方に、大西真祥住職という人物がいます!対馬に暮らす、真言密教のベテラン僧侶です。観音様の前で一緒に『観音経』を一緒に唱えてくださるのです。また、対馬の神仏について、徹底解説をしてくださいます。笑上戸で話も面白くって、大西住職と一緒に巡ることができることがなんて贅沢なのか!と感動しました。
黄金の稲穂が実る田んぼの真ん中に観音堂。片脇には綺麗な川が「つ」の字を描くように、穏やかに流れています。

大西住職「この形で流れる綺麗な川には、観音様は出現するんよねぇ」
大西住職「米所で清まってるところにそれぞれ観音様がいる。たまたまいる。」
大西住職「(観音像を見上げて)対馬らしい顔をしているでしょ」
私がツアー中にメモした、大西住職のお言葉3連続でお届けしました。

大西住職「対馬には霊能力者がたくさんいる」という興味深すぎる発言もありましたが、詳しくはまた別の機会に教えてもらいたいと思います。
米所で清まってるところにそれぞれ観音様が現れるんだ、と聞いて稲穂と観音像を拝んだあとその路肩でひと休み。
川口さん「おやつに、佐護のお米を使った米粉のシフォンと和紅茶をどうぞ」
・・・って完璧すぎるんですけど!?私は感動の涙をバレないように拭いながら煌めく「おこめシフォン」をいただきました。

まだ1つ目の観音様なんです、すみません、いちいち感動してるから長くって。続いて2つ目に訪れたのが「瀬田観音」。

裏山の小高い丘の上にあります。林が茂中にひっそりとポツンと。堂守の方が、我々ツアーが来るからと、朝から釜で周辺の草刈りをしてくれていました。特に階段が急な山道を念入りに。ありがたい。秘仏でお姿は拝せなかったのですが、きちんと観音経を唱えて手をあわせます。すると観音様に対峙できた実感が湧くからすごいです。
3箇所目は「三根観音」。小牧宿禰神社の境内にある観音堂です。近くに清涼な川が流れていました。

ところで、対馬六観音まいりは全ての観音様がお寺に祀られるわけではありません。むしろ逆。お寺じゃないところに観音堂だけポツンとある。呼び名は地名そのまま。この素朴さこそ、対馬の仏教だなと思いました。奈良や京都にあるような、政治に関わる人々が国家を守るための巨大寺院を作ったのとは大きく違います。古代より外国との交流の中で、いち早く仏教者が来着していて、僧侶の先導なく自然と民間で拝み始めていたのかなぁ。三根観音のように、神様と一緒に祀られるパターンももちろんありました。
神仏習合ですね。
大西住職「神様の力を私たちに合うようにチューニングしてくれる」
また、島民は、神社やお寺のお堂にお籠りして祈るという習慣があるのでその名残で、古いお堂の中には囲炉裏があるのでした。

4箇所目は「曽の観音」

修林寺の境内にある「曽の観音」。こちらも堂守さんが私たちを待ち受けてくれていました。特別に観音様のガラスケースを開けてくださり間近に拝むことができました。川口さんの地元の人との信頼関係と、下準備の徹底に脱帽するばかりです。
美しいですね・・・私はお腹周りにリボンのように衣が巻き付いていたり肩からかけたショールがクリンっと翻っていたり可憐な印象でした。ハスの花を持っていますが、マイクのようにもにえて、オーラ満点のソロシンガーのような雰囲気です。
同じ境内の本堂には、渡来仏といわれる独特なお像も。お顔がなんとなく異国情緒がありますね。 またここでも大陸との繋がりを感じられました。

さあ、日も沈んできたので、お宿に行きましょう。

宿主の原田順子さんに、私たちは大歓迎を受けるのです。綺麗に掃除された温もりあるお宅。和室や洋室が何部屋もあって、暖房で温められています。順子さん「○時から夕食ですよ〜」と、言われた時刻に降りていくと・・・

これで一人前です。この写真に写っていない料理もあるし、一皿開くとその隙間を埋めるように、新たなお料理が運ばれてます。原田さん「いっぱい食べて力つけないとね〜」と叱咤激励されながら。
全て対馬産。貝は原田さんが自ら海に出て、海女となり、拾ってくるのだそう。とっっってもおいしかった!!!隣の海にはイカの漁船がたくさん浮ぶほど、イカの名産地。「初めて、こんな、美味しいイカを食べたのは。」というと原田さんはにっこり笑って「うちじゃいつでも食べれるけんね〜」と。ああ心ほぐれる。原田順子さんも観音様なんじゃないですか!?
対馬の神仏談義や、参加の皆さんの体験談など、いろ〜んな話が飛び出て楽しくて仕方ない夜でした。お風呂をいただき、就寝。いやぁ、、、なんてディープなツアーなんだ。 参加者の方も旅慣れていて、好奇心と行動力に満ちた素晴らしい方々ばかりでした。

イカ漁船が浮かぶ海をバックに、大西住職と記念撮影。私がプロデュースする「みほとけ作務衣」を長年愛用してくださっていたという。奇跡の顧客様とのご対面ともなりました。嬉しい。
さあ、二日目は、霊峰「白嶽」に向かいます。
2015 年アイドルとしてデビューし、2016 年にはミス鎌倉を1 年間務めた。2018 年アイドル卒業後、仏像・お寺の面白さを発信するべく、自身を本名の「みほ」と「ほとけ」を掛け合わせ「みほとけ」と名乗り、ピン芸人として再デビュー。自称「お寺・仏像研究家」として年間500以上のお寺を訪れており、拝観した仏像は1万体を超える。尊敬するものに近づきたいという気持ちから自身を愛する仏に扮して表現する「仏なりきり」をはじめ、寺院でのイベントやカルチャーセンターでの講演、美術館・博物館とのコラボ、自身がプロデュースする作務衣の発売など、仏像にまつわる活動を幅広く展開中。
対馬グリーン・ブルーツーリズム協会
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