霊峰「白嶽」標高518m。
登山経験のある人にとってはそんなに高くないそうですが、私は登山初心者。非常に高く思えるのでドキドキ。しかも、海が近いので、眼下には雄大な海、むちゃくちゃ登ってる感が強いというのが特徴。
登山口の麓で、「トトロの耳みたいに2つの岩が尖っているのが山頂で、雄嶽と雌嶽の神聖な場所。みなさん雄嶽には上まで登りきりますが、雌嶺には上まで登りません。なぜでしょう?」二日目もワクワクのクイズが登場します。なんだろうな〜と思いながら、車は狭い山道を進んで、徒歩の登山口に到着!
川口さんがサクサクと扇動して歩いてくださるから安心です。自然の地形、炭焼きの文化、ヤマネコの生態、など山と人の暮らしについてクイズを出題してくれながら。楽しく聞いていたらあっという間に山頂付近へ。「白嶽神社」の鳥居で深々と一礼。

ここからは難所です。よじ登るように地面や岩壁を登って、徐々に山頂の大岩が見えてきました!これは降りるシーンですが、ウンショウンショ・・・とのぼって


ああ、なるほど、丸いお尻のよう。鳥居の奥の岩の、うっすらと穴が空いている奥を覗くと・・・その間にはなんと、観音様のような、そんな形に見える岩が聳えているのでした。もちろん人為はなく。自然の地形で作り上げられたもの。白嶽には、六観音まいりには入ってないけれど「第七の観音様」がいらっしゃったのです。観音様を踏みつけるわけにいかないから、雌嶽の上には登れないということでした。くるりと180°振り返るとそこには雄嶽。

なるほど、雄だ。風と高所の恐怖を感じながら、一生懸命登るとそこは絶景。

川口さん「浅茅湾からこの山がぽっこり見えます。海から対馬を目掛けて、穏やかな浅茅湾についた人はこの白嶽をみて安心する。難波したときは白嶽を目印にするし、困ったら白嶽の神様に心で助けてくれ!とお願いする。だから漁師さんからの信仰が集められているんです。」と海を眺めながら教えてくださいます。
だから、山の麓には、イカリや釣竿など、海にまつわるものがたくさん奉納されていました。さあ、ここで少しだけ山を降りて、見晴らしのいい安定した場所でお昼ご飯です。体を使って、神様や観音様に触れ合って、大自然を体感した後にいただく対馬のご飯、美味しいのなんの!しかもまた、この登山をずっとポットに入れた熱湯を背負って運んでくれていた川口さんが美味しいコーヒーを淹れてくれました。対馬のお塩を使ったスイーツまで準備してくださり!感謝感激です。

登山初経験なのに、もう山ガールみたいな顔してドヤる私。チームで登山をしたり巡礼したり、それぞれのペースを横目で見ながら、協力して気を使って、山の厳しさを学んで。人間形成にとてもいいなぁ、なんて思いました。白嶽の神様。ありがとうございます。
下山したら続いて5箇所目の観音堂「佐須観音」へ。

ここはも〜〜〜〜私は大興奮。なんといったって、仏像がたくさんいらっしゃったのです。法清寺の中にある観音堂。隣の鶴野という地区に元はあったものが、現在の樫根に移されたもの。鶴野では、674年に日本で初めて銀が産出された佐須銀山で繁栄を極めた地であり、その後430年間祈願所だった佐須観音堂は、地区の信仰の要だったそう。お堂に上がってびっくり。

素朴ならが大変美しいですね。髪型まで綺麗です。そして手の広がりには迫力があります。お衣の皺の彫り方が薄いのが平安時代の特徴ですよ。また注目は、左右にたくさんある、一木造りの仏像。これは・・・すごい!出会えて本当によかった!平安時代末期に造られたものだそう。

日本の仏像は、平安時代の終わり頃から、何種類かの木材をくっつけて作る寄木造りという製法で仏像が彫られますが、それより古い一本の木材から彫り出す、一木造りというやり方です。木そのものに霊性を感じるからこそできる技であります。オンボロだなぁなんて思う暇はありません。経年劣化や、廃仏毀釈で破損れたような痛々しさにも心砕かれるような思いですが、それでも失われていない仏さま然としたオーラを見逃してはいけません。このイチゴのような螺髪(髪型のこと)なんて最高じゃないですか!如来像を彫る時のハウツーを知ってはいるけど、技術がなかったのか、結果としてこんもりと可愛い髪型になってしまったのでしょう。でもお身体なんか丸く張り出すようで、立派ですよね。木が持つ力と仏様の存在感が融合したカッコ良さです。後ろの方に立っているお像は、吉祥天かしら。。。。
異国情緒も感じつつ、薄い彫りとなだらかな衣のひだの表現に、平安時代らしさも感じて、きっと立派なお堂だったんだなぁと強く思いました。大西住職の言葉通り、素朴で対馬っぽいお顔立ちですが、繁栄した村を支えた豪華さも感じるからすごい。きちんと観音経をあげて、お別れ。
・・・実はこの後、最後の「豆酘観音(つつかんのん)」をめぐり、11月3日の対馬観音まつり、があったのですが、私は仕事のためにここで帰らねばならず、お別れとなりました。ああ悔しい!最後の地を訪れるために、もう一度対馬には来なくてはいけませんね。最終日には、上記の2スポットだけでなく、貿易の歴史を学べる場所にも行ったんだとか。本当にフルコースのような対馬巡りです。

私は、対馬って国防の国だという印象が強くて、他者を寄せ付けないドゲトゲした文化があるんだと勝手に思って舞いました。だってずっと外国の脅威の最前線にあるわけですから。でも逆でした。平和を祈る島だったんです。
厳しい自然環境の中で、臨機応変で、心豊かで、神仏がたくさんいて、笑顔満点。観音様は自然と人の営みを見守るようにそっと一緒にいてくださいました。この豊かさに触れて身も心も超絶リフレッシュできました。
また、旅路で出会う方や、川口さん・大西住職・心の熱い参加者さんとのミートアップ。これが何より強い味方でした。近世に造られた三十を超える砲台も実は一度も使われずに済んだそうです。
すごいぞ、対馬。超体感型、対馬六観音まいりツアーは、きっとアナタの常識も覆してくれる、素晴らしい場所になるでしょう。わくわくに溢れたディープな旅をする準備をいますぐしてください!心が表れて体に力みなぎる旅を、ありがとうございました。魅力満点なので、このレポートもえげつないほど長くなってしまいました。最後まで読んでくださりありがとうございました。
2015 年アイドルとしてデビューし、2016 年にはミス鎌倉を1 年間務めた。2018 年アイドル卒業後、仏像・お寺の面白さを発信するべく、自身を本名の「みほ」と「ほとけ」を掛け合わせ「みほとけ」と名乗り、ピン芸人として再デビュー。自称「お寺・仏像研究家」として年間500以上のお寺を訪れており、拝観した仏像は1万体を超える。尊敬するものに近づきたいという気持ちから自身を愛する仏に扮して表現する「仏なりきり」をはじめ、寺院でのイベントやカルチャーセンターでの講演、美術館・博物館とのコラボ、自身がプロデュースする作務衣の発売など、仏像にまつわる活動を幅広く展開中。
対馬グリーン・ブルーツーリズム協会
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