長きにわたって人間と深い縁で繋がってきた馬たち。昨今ホースセラピーという言葉を耳にしますが、温和な性格と優れた共感能力で人間の癒しの存在として欠かせません。映画や絵本でも、戦火を生き抜いた話や、飼い主との絆の物語など感動のストーリーがいくつもあり、文明の発展を共に遂げてきた、まさに人間にとって犬と双璧をなす動物とも言える存在です。長きに渡り、戦や労働の相棒、移動手段として使用されるなど、人間の暮らしを豊かにするパートナーとして生息してきました。
やがて大陸から日本各地へ渡り、辿り着いた地の気候風土や環境に応じて馬たちは繁殖し特徴を変えてきましたが、現在「日本在来馬」として残っているのはわずか8種類。その中の1種が「対州馬」と言われています。

対州馬はモンゴルの在来馬に近く、厳しい自然環境を生き抜く丈夫な体が特徴で、力が強い一方、小柄で温厚な性格。女性や子供にも親しまれ、耕作や荷役に欠かせない相棒として明治時代には島内で4千頭以上が飼われていました。
長年、対馬で暮らす人々の暮らしに寄り添ってきた対州馬ですが、近代、車社会になり農作業環境も機械化され環境が大きく変化したため、対州馬の数も激減し、平成に入って30頭以下になるなど在来馬の中で最も絶滅の危機に瀕した馬と言われるようになりました。
この状況を打開するために、対州馬の保存や活用への取り組みがスタート。乗馬や餌やりなどで人と馬とが触れ合う場を増やす、背中に人を乗せることができるように調教の機会を作るなど、行政と民間が一丸となって近代の社会環境に合わせた保護活動に務めます。 その輪は少しずつ広がってきました。

現在、対州馬は目保呂ダム馬事公園、あそうベイパーク、東横イン対馬比田勝で見学や体験が可能です。
さらに年に1度だけの秋の特別イベントとして、より多くの人に知ってもらうために、「対州馬ふれあい祭り」を企画しています。見学や餌やりの体験、乗馬体験はもちろん、イベント企画として少年倶楽部メンバーの子供たちによる乗馬の技能披露や、馬と人によるリレー競走、クイズラリーやパフォーマンスもあります。

イベント限定の地産地消グルメ屋台もあり、親子連れやお友達同士での秋のお出かけにもおすすめです。子供達が運動会のように思い切り走り回り、馬と戯れる姿をみていると心が和みます。まだ馬が沢山飼われていた時代は、このような笑顔がそこかしこに溢れていたのでしょうか。馬と人間の精神的な距離の近さ、馬の持つパワーに気付かされ、技術では成し得ない持続可能な関係について考えさせられます。
情緒を豊かにしてくれ、子供にも大人にとっても大きな学びとなる対州馬との触れ合いのひととき。笑顔がほころぶ風景に心癒されながら過ごせる貴重な機会、秋の行楽に一押しの催しです。
(対馬感考案内人F)
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〈イベント概要〉
◎開催日:2025年11月9日(日)10:30-13:00 ※雨天中止
◎開催場所:目保呂ダム馬事公園
◎内容:・少年俱楽部児童発表会
    ・馬 vs 人リレー
    ・対州馬パフォーマンス
    ・対州馬体験ブース開催
    ※乗馬/ふれあい体験/餌やり体験/クイズラリー
対州馬保存会Webサイト:https://taishu-horse.jp/news/919.html
対州馬保存会インスタグラム:https://www.instagram.com/taishu_horse_conservation