対馬で見られる四季折々の渡り鳥

対馬で見られる四季折々の渡り鳥

対馬は、バードウォッチャーの憧れの島の一つです。それは、渡り鳥にとって交差点、さらに言えば要衝ともいえる場所だからです。日本の北西端に位置する対馬は、日本中を通過する渡り鳥の他に、ヤマショウビンに代表されるような大陸に主に分布する野鳥にも出会うことができます。対馬野鳥の会によれば387種(亜種を加えると405種)の野鳥が対馬で確認されていて、そのうち約85%は渡り鳥や迷鳥です。

また、他の離島との違いは、山林、寺社林、畑、田んぼなどの環境が豊富にある大きな島だということです。小さな離島では、疲れ果てた野鳥が不時着するように休んでいる様子をよく目にしますが、対馬では、多くの渡り鳥が旅の疲れを癒し、その鳥本来の姿を間近に観察することができます。

春、3月のノビタキやツバメ類から始まる春の小鳥たちの渡りは、4月のコマドリ、ヒタキ類、そして4月末からゴールデンウィークに向けて最盛期を迎えます。畑や田んぼに行けば、キマユホオジロやコホオアカといったホオジロ類は数十の群れで現れ、その中にはシマアオジやシマノジコといった鳥たちが紛れていることもあります。黄色や赤の色鮮やかなホオジロ類たちで賑わう農耕地は対馬ならではの光景です。

対馬には大規模な農耕地は無く、谷間の集落には、農地や藪、民家とその周りの生垣が隣接し、それらを囲うように斜面林があります。このような木々と農地が隣接しているような環境はホオジロ類たちの好きな環境です。木々に安心して身を潜めながら、周りの畑を行き来して、餌をついばむ様子が観察できます。探鳥地と生活の場が近いうえに対馬は道が細く、農道や林道も、仕事のために利用している人たちがいます。地元の方々への配慮を忘れずに、お互いに心地よい探鳥時間を過ごせるように心がけてください。

森にいくと、ヒタキ類や、ムシクイ類、ツグミ類のさえずりがシャワーのように響き渡り、林床からは、シマゴマやコルリなどの小鳥たちの声もします。対馬では、すっかり普通に見かける渡り鳥になったカラアカハラのエキゾチックなさえずりも響き渡り、独特の雰囲気があります。見るだけでなく、耳を澄ませて、音からも対馬の鳥類相の特徴を感じてもらえると嬉しいです。

5月2週目以降は、様々な珍客が訪れます。ヒメイソヒヨドリやチオオジュウイチなど耳馴染みの無い鳥たちが渡ってくることもあります。印象的な迷鳥の出会いは、レンカクを観察した時のことです。レンカクはスラッとした黒い体に長い尾、首には白地に黄色い模様の入る美しい野鳥です。田んぼで探鳥をしていると、パッとその鮮やかな姿が目に入り、思わず魅了されてしまいました。レンカクは本来台湾などで繁殖する野鳥なのですが、驚くことに、この年は対馬島内で同時多発的にレンカクが合わせて4羽も観察されていました。

時を同じくして、台湾に生息するチョウ類も対馬で観察されていました。ここから先は妄想の域を超えないのですが、この時、梅雨前線が急激に北上しており、合わせて押し出されるように移動してきたレンカクたちが対馬に避難していたようにも思えます。このように対馬では、広域での気象現象によって珍鳥に出会うこともあります。

対馬のバードウォッチャーにとっての次のお祭りは、9月、アカハラダカの渡りです。小型の猛禽類のアカハラダカは朝鮮半島での繁殖を終えると、越冬地である東南アジアに向けて対馬周辺を渡って南下していきます。9月になると対馬野鳥の会の会員は居ても立ってもいられなくなり、みんな内山峠にあるアカハラダカ展望台に集まっていきます。ここは、秋の猛禽類の渡りを観察する一大スポットで、日本最大の猛禽類の観察数を誇るエリアです。多い日では一日に1万羽以上のアカハラダカを観察でき、9月の1か月間で12万羽ものアカハラダカが渡る年もあります。この渡来数もさることながら、30日間休まず早朝から昼過ぎまで観察し渡来数のカウントを続ける対馬野鳥の会も驚異的です。

アカハラダカの渡り個体数には、9月上旬から成鳥の渡りが増え、9月15日頃に前半のピークを迎えます。その後、その年生まれの若鳥も増え、9月20日過ぎに後半のピークを迎えます。

アカハラダカの渡りは、6時台から始まります。前日から対馬に渡り一晩休憩したアカハラダカたちは、日の出とともに上昇気流を探します。朝早くから渡るアカハラダカは数は少ないのですが、8時ごろまでの朝日を浴びながら羽ばたきキラキラと輝く姿はとても美しく、ぜひ見て頂きたい風景です。

日が昇ってくると、上昇気流に乗ってアカハラダカたちが集まり始め、群れで渦を巻くように飛ぶ鷹柱ができます。多い時には、4つの鷹柱が同時に出てくることもあります。目の前での鷹たちの乱舞する姿は本当に圧巻です。

10時半を過ぎると、朝鮮半島を朝出発した群れも対馬に合流します。北からの風に合わせて、山を越えて大群が飛び出してきます。大きい群れでは7000羽の群れをカウントしたこともあります。目の前を途切れることなく渡っていくアカハラダカたちはまさに川の様でした。

天候が悪い時は、ぜひ、内山地区周辺の林道を回るのをおすすめします。足止めを食らったアカハラダカたちが雨宿りをしている様子を観察することができます。

冬にも、大陸からオオワシやマナヅル、ガン類など様々な渡り鳥が渡ってきます。

特徴的なのは、ヤツガシラが一定数越冬していることです。頭の派手な冠羽で人気のヤツガシラは、対馬では通年で観察記録があります。その中でも冬は、どこかしらで出会う確率が高いです。ヤツガシラは神出鬼没で、神社、農耕地、さらには空き地や道路際など、思いがけない所でも出会うことがあります。

最近はハギマシコの越冬が見られるようになり、ツワブキの実を食べているのを見かけます。これはシカによる植生の劣化や乾燥化によって、ツワブキが増えたことと関係しているのかもしれません。新たな野鳥の来訪はもろ手を挙げて喜べるとは限りません。そして、野鳥は色々なことを伝えてくれていて、私たちは野鳥たちのメッセージを受け止めないといけないと感じています。

渡り鳥が多いことから、対馬野鳥の会は、一期一会の出会いをみんなと共有するオープンさがあります。ぜひ、フィールドで対馬野鳥の会の方々とも交流しながら野鳥観察を楽しんで頂けたら幸いです。

高田陽
Profile

高田陽

2020年に対馬に移住。対馬野鳥の会にて活動中。「対馬の鳥と自然」にも執筆協力。対馬はニホンミツバチ養蜂の島としても知られており、養蜂も弟子入りして飼育をしている。

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