対馬は国際的な希少種オオワシ、オジロワシの越冬地

対馬は国際的な希少種オオワシ、オジロワシの越冬地

対馬は、繁殖地と越冬地をつなぐ渡り鳥の中継地点。春と秋には、ロシア、中国、朝鮮半島、日本本土を往来する無数の鳥たちが立ち寄ります。そのなかでも北端の上対馬・鰐浦は、冬になると大陸からの鳥たちが集う、知る人ぞ知るバードウォッチングの聖地。冬は他の季節よりも比較的、適した時期でもあるんです。森が生い茂っている夏に比べると、冬は澄んだ空気の中で、葉を落とした木の枝に留まる鳥たちの姿がくっきりと浮かび上がり、姿を捉えやすくなります。また、冬場は餌資源が少ないため、鳥たちは木の実を求めて人里近くにも訪れることもあります。対馬の里山ではカタシロワシやクロハゲワシが姿を見せた記録もあり、海辺ではウトウやシノリガモの姿が見られたことも。

そして、冬の野鳥観察をさらに特別なものにしてくれるのが、絶滅危惧種のオオワシやオジロワシとの出会いです。日本国内で見られる最大級の猛禽類で、2メートルを超える大きな翼を広げ、海を背景に悠々と旋回する勇姿を一度目にすると、双眼鏡もカメラも離さずにいられません。オレンジ色の嘴に鋭い眼力、猛々しいシルエットに思わず見惚れてしまいます。

冬鳥として本邦に飛来するオオワシ

毎年冬になると、多くのオオワシがオホーツク海沿岸、カムチャッカ半島などの繁殖地から北海道を中心に南下しますが、九州で見られるエリアは限られ、ここ対馬はその貴重な飛来地の一つなのです。

オオワシは翼に厚みがあり2mを超える
オジロワシはオオワシに比べると一回り小さい

空の巨人と称される、猛禽類最大級の迫力。広大な生態系のなかで生き抜いてきた尊い命。しかし、勇ましい姿の背景には人の営みによって変わりゆく自然の現実があります。オオワシやオジロワシは現在、両種ともに生息地全域で減少しており、オジロワシの世界個体数は2万〜4万弱、オオワシはわずか5千羽ほど。かつては豊かだった海の資源が枯渇しつつあり、さらに森林伐採や産業開発などによって冬鳥たちが命を繋いできた道が、少しずつ細くなっているのです。

海や川沿いで暮らす鳥たちは魚類を主食とし、その栄養分は糞や死骸となって森を潤すことで生態系を循環させています。生態系の中で重要な役割を担う鳥たちの個体数減少。本来保たれるべき自然のバランスが崩れゆく危機に気付かされます。

バードウォッチングは、野鳥たちの逞しい姿を見守りながらも、共生のための環境保護にどう向き合っていくのかを自問自答する、考察の機会でもあるのです。

※写真提供:正島和幸(対馬野鳥の会)

(対馬感考案内人F)

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